「お帰りなさい」
玄関のドアを開ければ、雅はすぐに走り出てきた。
「遅くなって、ごめんね」
まともに顔を見れない。
頼まれた紅茶の入った紙袋を雅に手渡すと、鷹野は無理に笑顔を作った。
出来ることならば、内緒にしておきたい。
付き合っているわけでもないのに、雅に知られるのは怖かった。
ドアに鍵をかけようとして、止められる。
「凱司さんも、まだなの」
「え? 今何時…ずっとひとりだった?」
ガレージを通らなかったから、気が付かなかった。
「じゃあ、俺が遅くなることも、知らなかった?」
雅は小さく頷くと、大丈夫、と微笑んだ。
強烈な後悔が、津波のように押し寄せる。
「………ごめん、ね…?」
「…大丈夫、ですよ。テレビあるし、凱司さんが出してくれたライブのCD聴いてたし」
いま、コーヒー淹れますね、と小首を傾げて背中を向けた雅に、思わず手が伸び、下げた。
「…紅茶が…いい」
「じゃあ、これ、淹れますね」
にこりと振り返って紙袋を振った雅が、一瞬、不自然に視線を逸らせた。

