……ああ、俺、失敗したんだ。
そう思ったのは、もう暗くなった外に、裏口から出た時だった。
「…美和さん……何してるんですか…?」
昼間、向かいのカフェに連れ出し、ついでに茶葉を買った。
彼女も始終にこにこと、ヘーゼルナッツのタルトをつついていたのに。
夜は付き合えない、と断った事に、不思議そうな顔をしていたけれど。
まさか彼女が、それからずっとカフェに居座っていようとは。
後でカフェのマスターに謝らないと。
「今日は旦那が居ないの」
だから、なに。
「次からはちゃんと予約取ってヘアパックにでも来るから」
俺は帰りたい。
「だから今夜だけ、しない?」
…帰って、雅の作る食事を一緒に、とる。
今日から新学期だった雅の話を、聞きながら。
「…悪いけど」
だから、帰りたいんだ。
…抱いてる暇なんか、ない。
…ない……のに。

