「鷹野、彼女は…あっちの客だったな?」
声をひそめた店長に、頷く。
あっちの、客。
ホストをしていた頃の、昼夜問わずの、上客。
髪をいじり、爪をケアし、エステを施す昼間の客。
酒を飲ませ、甘く囁き、その肌を愛撫する夜の客。
彼女は、両方共に、鷹野の客だった。
「もうバレたよ店長…!」
ああ、どうしようめんどくさい、と。
髪に指を突っ込んだ鷹野は、ぎゅっと目をつむる。
「…急に辞めたりするから…」
「しょうがないじゃないか… あいつに辞めろって言われたら辞めるしかない」
「まあ…そりゃ…そうだよな」
息吹の借金を返すために、少しでも金が欲しかった。
幸い、容姿は良かったから、この店長の紹介で、夜の仕事を兼ねるようになったけれど。
2年近くも続けた去年の冬の深夜に、職場で高熱を出して倒れた鷹野を迎えに来た凱司が、その場であっさり退職させて以来。
夜の客として彼女と会うことはなかった。
なかった、のに。

