ようやく全て飲み込めたのか、田鹿は息をつくと、チケットを指差した。
「先輩んとこと、俺たちのライブチケット。この前と同じ所だけど。買う?」
「ライブ? あ、夕方なのね…訊いてみるから、明日でもいい?」
アルマーニのバッグからノートを出し、田鹿の机からシャープペンシルを取り上げると、雅は一番最後のページに、場所と時間とをメモした。
「田鹿くんもやるの?」
「やるよ~」
俺、ベース弾くの知らなかった? と、田鹿は笑う。
雅はノートの端に、“田鹿くんベーシスト”と追加すると、カッコいいね、と微笑んだ。
「行けるよう、頼んでみるね」
「うん、期待してる!」
体を起こし、ノートをしまいこんだ雅は、じゃあ、明日ね、と今度こそ教室から出ていった。
「お前、加奈子じゃなかったのかよ」
黙って見ていた隣の席が、咎めるように田鹿を見た。
「やっぱそう思った?」
「普通、背中叩かれる事はあっても、あんな顔覗き込んでさすったりしない。須藤、お前の事好きだとか」
「ないない。絶対ない。沈められるから滅多な事言わないで」
田鹿は、わざとらしく情けない顔を作って、笑った。

