「なんで…かな……気が付いたら、車の中でした」
それから……怒られた、と。
ドライヤーの音で、声は聞き取りにくいけれど、鏡に映る雅の唇を、読む。
「目も合ったことなかったのに、ものすごく怒られました」
ふぅん、と鷹野は相槌をうつ。
凱司がわざわざ“迎えに”行ったらしいのだし、どんな女だろうと思えば。
怒られたなどと頬を膨らますような、ロリ。
いや、少女。
「凱司を気にいったの?」
腰を屈めて耳の傍で聞いた。
「……刺青が……蛇か龍か……髪が地毛なのか染まってるのか……ピアスいくつ開いてるのかなあとか………綺麗だなあとか……思ってただけ、です」
あらかた乾いた雅の毛先に保湿ローションを馴染ませながら、鷹野はくすくす笑う。
「………それだけ?」
「……うん、それだけ」

