「凱司さんに言えないような言動は、なさらない事です」
小さく頷く雅に、蓋の開いたペットボトルを差し出した。
「さあ、何も聞かなかった事に致しましょう。雅さん、この部屋には露天風呂がありますよ」
背後の窓を振り返り、穏やかに笑んだ宇田川を申し訳なさげに見上げ、雅はようやく僅かに微笑み、窓を見やった。
「大浴場が混んでいるなら、せっかくですから、こちらで入ったらいかがですか?」
障子を閉めてしまえば、見えませんし、私はここで書類を作ってますから。
正座を崩し、片膝を立てた上に腕を乗せた宇田川を見つめ、雅は、あ、と声を上げた。
「思い切り“宇田川さん”って呼んじゃいました」
「大丈夫ですよ、誰もおりません」
いつも通りに静かな宇田川も、いくぶん、ほっとしたのか、胸ポケットから煙草を取りだすと、無造作に1本口にくわえた。

