ぽたり、と手の甲に落ちた涙に、宇田川はため息をついた。
「…泣かないでください。要は、私が雅さんにキスをして、それが感じるか感じないか知りたく思った、って事ですね?」
自分の失言が招いた事態とはいえ、まさかこんな飛躍した事になるなんて。
宇田川は頭を振って、大きく息を吐き出した。
「あなたは、ひとりで思い詰める質なんですね。馬鹿ではない分、とても厄介です」
いいですか、と宇田川は雅の顎に指をかけ、顔を上げさせた。
「よく、考えてみなさい。私がその気になっていたならば、5分後あなたは、あそこで私に抱かれているかも知れません」
真っ直ぐ指差した、奥のドア。
開いたままのその向こうにはベッドが2つ。
「抱いてしまった私、抱かれてしまったあなた。凱司さんに、どう言い訳しますか?」
あなたを守るために、凱司さんも一樹さんも、一生懸命なのに、宇田川と寝ました、なんて言えますか?
首を小さく横に振り、雅は合言葉のように。
あたしは…凱司さんのだから、と、小さく呟いた。

