「雅さんは、私の娘です。わかりましたか?」
部屋を取り、車から連れ出す時に、言い含めはした。
胡散臭い取り合わせは、時には通報される事もある。
そうなれば、主に凱司に対して言い逃れは不可能。
余計な勘繰りをするタイプの男ではないが、雅が絡む時点で、定かではない。
だから、確かに言い含めた。
確かに…そうなのだが。
「ねぇパパ、喉渇きました。何か買って来ていいですか?」
「…私が…買って来ますから」
「いえ、あたしが行ってきます。パパは何飲みますか?」
「……………」
「…パパ?」
おかしくないだろうか。
宇田川は笑う事も出来ずに、頬を引きつらせた。
「み…雅さん、部屋内ではいいんじゃないでしょうか……。といいますか、あなたは“父親”を誤解しています」
正座をした宇田川の膝に手を掛け、甘えるように見上げてくる雅は、そうですか? と首を傾げた。

