たぶん恋、きっと愛




雅を敢えて車で待たせ、フロントでメニューを見れば案の定。

雅の性格を、ゆっくり思い出せば出すほど、選択を間違えたとしか思えない。


部屋は取らずに、雅が自分だけ入浴し、宇田川は車で仕事、など許すとは思えない。

せっかく楽しみにしているようなのに、やっぱり止めましょうとも言い難い。


雅が楽しく温泉に入る事が出来、かつ自分も入浴可能な状態にするには、やっぱり部屋を取らねばならない。


いや、大浴場への入湯のみのメニューは、ある。



「……1泊で」



ただ、宇田川の背一面で、緋鯉が滝を昇っているという事実が紛れもなく重い。

言わずもがな、和彫りは大浴場立ち入り禁止。


なんだか全ての予定が予期せぬ方へ進んでいくが、今日中に登録印をもらって、雅を今日中に凱司の元へ帰さねば、いや、返さねばならない。

間違っても日を跨ぐつもりなどないのに、取れる道は、それしかなかった。



サインは、「宇田川章介」、「宇田川雅」。


制服の娘は他人ではなく、実の娘、だ。