「それにしても、私が先生だとは……。先に決めておけば良かったですね、配役」
先ほどは否定も肯定もしなかったけれど、思わず込み上げた苦笑と共に呟いた。
「だって、か、彼氏かなんて言われたものだから……」
申し訳なさそうに声をすぼめる雅に、宇田川は珍しく声を立てて笑った。
「彼氏ですか!それはまたずいぶん凄い発想をされましたね」
「笑い事じゃないですよっ…あたしなんかとそんな風に見られたら……宇田川さんに申し訳ないです…」
ああ、と宇田川は思い出す。
雅は自分を卑下しがちだ、と。
少しの違いなのだろうが、この違いが大きくなりすぎている。
「違いますよ、雅さん。雅さんが私に合わないんじゃなく、私が雅さんに合わないんです」
だいたい、年齢差を考えなさい。
それから余り見つめるもんじゃありません、と、つい小言も言いたくなるほどに。
雅は、納得のいかないような曖昧な表情で、宇田川の横顔を凝視していた。

