「仕方ないですね、少し待ちましょう。出直す時がありません」
「す…すみません」
一緒に住んでいる叔父は、勤めに出ているとしても、まさか旅行に出かけられたとは…と、宇田川は苦笑混じりに眉を下げた。
「昨日出かけたから、夕方には戻る筈ですよ。先生、遠いのに大変でしたね」
先生、と呼んで笑顔を見せたご近所さんに、ありがとうございます、ときちんと頭を下げた宇田川は、雅を車へと促した。
ドアを開けてやり、雅が慌ただしく乗り込むのを待ってから閉めると、興味深く見ていたご近所さんに、もう一度堅く会釈をし運転席へ滑り込んだ。
「どこか、行きたいところがありますか?」
時間が空いてしまった。
何となく走り出しながら、宇田川は可笑しそうに笑った。
「ごめんなさい、ほんとすみません」
まだ、陽は高い。
だが自分が雑務をする為にこのまま地元に戻るのは、せっかく制服まで着た雅が可哀想だ。
宇田川は、ぽっかり空いた時間を、どう潰すか、残ってしまう雑務をどう処理するか、考えていた。

