着るもの、ない。と。
雅は暖まった体を拭きながら、濡れて丸まった服を持て余していた。
さすがに再び着れる気はしない。
まあいいか、きっと、どうせ脱ぐ、とばかりに。
拭いていたバスタオルを体に巻き付け、濡れた服を抱えて。
雅は廊下へと素足で出ていった。
玄関から真っ直ぐ突き当たりの部屋は、リビングなのか、そっとドアを開けるとコーヒーの香りが濃く漂っていた。
「あの…」
ガチャンっ
「服、乾かしたいんだけ……」
「なんて格好で出てきやがるんだ!」
取り落としたようにも見えたコーヒーカップを持っていたのは凱司。
首からタオルを掛け、シャツを脱いだ凱司は、雅の言葉を遮るように叫んだ。

