たぶん恋、きっと愛




「あの……」

遠慮がちに声を掛けられ、宇田川は、我に返り、はい、と返事をした。



「息吹さんは……手、大丈夫だったんですか?」


「息吹、ですか?」


何か聞かれるとしたら、凱司か鷹野の事だと思っていたのに。


「うん、だって、思い切り刺したって鷹野さん言うから…」

俯き加減でそう言う雅をちらりと見れば、手に持ったピンク色のタオル地を、ぎゅ、と握り締めている。



「…息吹の右手は、ちょうどここ」

信号が赤に変わったので、雅の右手、親指と人差し指の間を、指で触れた。


「その、水掻きの付いていそうな箇所から3cmほど、貫通させた後に刃を押し倒したせいで親指の骨がえぐれ…」


「親指、無くしちゃったんですか!?」



顔色を無くした雅の悲鳴のような声に。

少し生々し過ぎた、と宇田川は慌てて指を離した。



「いえ!大丈夫ですよ!ちょっと動きは不自由になるようですが、ちゃんとくっつきます」