宇田川から見た雅は。
大人びた、それでいて時折ひどく幼い行動をする、少女だった。
凱司から受けた説明では、出会った頃の鷹野のように、もっと派手な容姿で、荒んだ目をしていてもおかしくはないと思うのに、雅はむしろ清楚で、まっすぐな目をしている。
髪の毛は毎晩、鷹野が手入れをしているというから、綺麗なのはむしろ当たり前かも知れない。
「あそこでの生活に、不便はありませんか?」
見ている限りでは、雅を巡る葛藤が、ある。
鷹野にも、凱司にも。
「大丈夫です。自由にさせて頂いてます」
「もし、何か言いにくい事があったら私に言ってくださいね」
「うん、あ、はい、ありがとうございます」
少し打ち解けた、証拠。
崩れる敬語。
凱司が言っていた。
やたら幼い言葉遣いがたまに出る、と。
気になった物はすぐに触る、と。
そういえばさっきも指をのばしかけましたっけ、と、宇田川は、顎にだけ生やした髭をひねった。

