「一樹さんの時は大変でしたよ、なんせ何も喋って頂けなかったから」

「そうだな、親類は皆知らん顔するわ、息吹は死にかけてるわ、お前は暴れるわ…」


くくく、と思い出し笑いを溢す凱司から、うるさい!とばかりに吸い差しを取り上げた。



「心底可愛くなかった」

「その点、雅さんは楽でしたね。女の子ですし、気を使いましたが……」


言いにくそうに語尾を濁らせた宇田川が、こちらに丸投げされて来ましたから、と小さく続けた。

金だけ出せば、責任は果たしたと思っているのでしょうね、と、宇田川は悼ましそうに、静かになったソファーを見やった。


チョコレートの箱を抱えたまま、しばらくつまらなそうにコロコロと転がっていた雅は、ソファーの角にうずまるように身を押し込めて。

すっかり寝息を立てていた。



「じゃあ、その従姉から雅ちゃんのを集金してくればいい?」

「いや、雅名義の口座を提示した。父親から直接こっちに入れさせる」


俺との相殺差額も、そこに入れとくし、管理は昌也がする、と、凱司は。


もう1本、煙草に火を付けた。