「…調べた…の?」


「いろいろ、あるだろ。日本に生きてりゃ税金だ保険だ学費だ戸籍だ…雅くらいの未成年がひとりで生きてる訳ない。お前の時とは違う」


ゆっくり煙を燻らせながら、凱司は、だから、と続けた。


「昨日、父親と連絡を取った」


「ベルギーにお住まいでしたね」


口を挟んだ宇田川に、凱司は眉間のシワを深くした。


「あんまり、娘と関わりたくないようだったな。小さい頃に別れたきりだと」


「ベルギー?」

どこだそれ、と思わず口を突いた言葉に、凱司の眉が跳ね上がった。



「鷹野。お前、雅と一緒に塾行っとけ」

「えっ、今更!?」


半ば本気で身を引いた鷹野に、宇田川の圧し殺した笑い声が聞こえた。