いつもなら楽しめる沈黙も、今は多少の罪悪感に邪魔されて楽しめない。
鷹野は再びリモコンを手に取り、音量と音楽とを変える。
軽く淡い音から、重く低い音に響きが変わった中、雅が半身を起こした。
「あ、のね」
「ん」
雅はそっと、鷹野の袖を掴む。
俯き加減で、頬を上気させた雅は、やっぱり切な気で。
官能的で。
そんな顔されて、体を離せた自分を尊敬する、と鷹野はひとりごちた。
「あたし、…単にキスに感じる体質、みたい、ね?」
「………そう? …濡れた?」
あんなの、ただの口実だったから、すっかり忘れていた、と鷹野は思う。
ずっと実験のつもりで耐えてたのか、と内心苦笑した。
「……うん、濡れた」
やたら素直にとんでもない答えをした雅が、はっと我に返ったかのように真っ赤になった。

