「普段、メタルばっかりだからたまーに聴きたくなるんだよね、こういうカフェ系のやつ」
絞られた音は小さくて。
淡く薄い、音触。
雅は膝を抱えて、その間に顔を伏せた。
「…凱司に、なに言われたか聞いても?」
ぴく、と指先だけが反応したけれど、雅は頭を上げなかった。
ただ、ぎゅ、と膝を抱える腕に力が入ったのだけは、わかる。
「……キスの1つくらいは有り得るかなあとか、思ってんだけど?」
多分、思い付く所は同じだ、と鷹野は確信していた。
不思議と、佑二の時のような焦燥感は、なかった。
凱司の連れてきた、凱司の庇護下にある、凱司のもの。
という認識が根強いのか、凱司が何をしようと、強い焦燥は、生まれなかった。
ただ、不快なだけで。

