「凱司さん、彼女に何をしたんですか」
宇田川が、シンクの中の破片を拾い上げ、低く訊いた。
「………何も」
「…では、何をおっしゃいましたか」
「…………」
自分のカップをようやく取り、冷蔵庫からアイスコーヒーを注いだ凱司は、口をつぐんだ。
「何を言いましたか」
「…なんでお前が苛ついてんだよ」
残ったカップを濯ぎ始めた宇田川は、凱司の憔悴したような声の中に、戸惑いを色濃く感じ取った。
「…どう扱ってやればいいのか判らなくなっただけだ」
「それは、どういう…」
振り向いた宇田川に、ひどく苦し気な目をして、凱司はゆっくり息を吐いた。
「ちょっと、絞め殺したくなっただけだ。なんも、しちゃいねぇ」
低く低く呟く凱司は、こちらを見ない雅を、苛立たしげに、見つめた。

