抱いて、みようか。
昨日のキスのように。
あの、ガキを?
泣かさずに、どうやって?
仰向けに寝転がったまま、凱司は左腕の刺青の蛇を真っ直ぐに天井に向けた。
雅を捕らえたのは、この蛇だ。
引き寄せるのも、髪を掴むのも抱え込むのも、この蛇だった。
「笑わなく、なるかも知んねぇよな…」
雅の、作られた笑顔ではなく、時折見せる、素の笑顔。
嬉しそうに、楽しそうに笑う、目。
あれを、無くすのは。
「…惜しいな」
顔の上に左腕を乗せ、目を閉じた。
抱いてもいい。
泣いてもいい。
俺のものならば、息吹は手を出さない。
俺のものは、欲しがらない。

