たぶん恋、きっと愛



「お前、…怖かったろ?」


無言で、何がだろうかと思案する雅に本気で苛ついたのか、眉間に皺を寄せると、雅の腕を強く引く。

バランスを崩した雅は、ぬいぐるみを取り落とし、凱司に倒れ込んだ。



「息吹は別に改心したわけじゃない。お前があんまり無防備なのは、…困る」



「……そ、れは、あたしが凱司さんのだから、ですよね? 怖いとか、平気とか、関係ないですよね?」


ただ単純に、凱司さんの沽券に関わるから身を守れ、って言うなら…頑張ります。

と。

凱司の肩に手を置いて体を起こした雅は。

視線を、掴まれたままの腕に泳がせた。


思いの外、まともな調子で喋ったかと思えば、相も変わらず卑屈な様子に、凱司は苛立たし気に目を細める。


「…今は凱司さんの所有物だから…凱司さんがするな、って言うなら……しない」


淡々と話す内容の意味を、わかっていないわけではないとは思う。


だけれども。


「違う」

「…違いません」

「俺が言ってんのは…っ!」


「やだ!!」


遮るように、凱司の膝に手を置いて、雅は視線を合わせた。



「…あんまり、心配されると…怖くなる」

平気だなんて言えなくなったんだから、せめて、心配しないで。

じゃないと、怖くて堪らない。
凱司さんと鷹野さんの弱味には、なりたくない。

何かあったら、棄てて欲しいくらいなのに…!



そう、呟くと。

雅は泣きそうになった顔を見られまいと、凱司の肩に額を当てた。