「…おかしいな」
依然として消えない嫉妬に似た感覚に、鷹野は胸を押さえた。
ちょっとした、焦燥感。
昨夜はそんなこと、なかったのに。
佑二の胸に頭を乗せる雅を見ても、こうはならなかったのに。
「……コレは…マズい」
いくら怪我をして、熱出して。
興奮が醒めて気弱になっていると仮定しても。
「……俺のじゃない」
凱司のだ。
手出しは、厳禁。
本気で好きになったら、いけない。
ぐっと眉を寄せて何かを堪える鷹野は、ベッドに座ったまま数秒間、俯いた。
「…本気は、駄目だ」
目を不機嫌そうに光らせ、立ち上がった鷹野に笑みが浮かび、ついで、苦笑に変わった。
「駄目だ、…手遅れだわ」
くすくすと笑いながら、吹っ切れたように短く息を吐き出すと。
あーあ、きっついなあ、と、疼く脇腹を押さえて部屋を、出た。

