「熱、下がりませんか?」
鷹野の手を取らんばかりの雅の手首を、佑二は引き寄せた。
「近い」
「…ですか?」
離された距離を名残惜しそうに目で測る雅と、仏頂面の佑二の二人を眺めた鷹野は。
ざわり、と嫉妬にも似た感覚を覚えた。
「…大丈夫。下がって来たと思う。ありがとね、電話したら、そっち行くから」
痛み止めは、傷の痛みを消してはくれても、縫った痛みは消さないらしい。
チクチクと鈍い痛みを抱え、鷹野は起き上がる。
馴れ馴れしく雅の背を促し、部屋から出ていく佑二を、ぼんやりと眺めた。
…“馴れ馴れしく”?
……おかしい。
こんなにも不愉快になるなんて。
きっと、傷が…疼くせいだ。
鷹野は、落ち着かせるように深く息を吐くと、自分で見積もった2日間の欠勤を伝えるために、液晶の割れた携帯を手に取った。

