たぶん恋、きっと愛



「怪我、させる気…は、なかったんだ」


ぽつりと呟いた息吹に、嘘は無いように思えた。


確かに、ナイフ出したの俺だけど、と、息吹が独り言のように続けるのを、凱司は黙って聞いていた。


ドアが静かに開き、お茶が三人分差し出されたのを、無言で受け取った宇田川も、固い表情で聞いている。


「…あの子、…道案内してくれた子、あれは一樹の、か?」


「いや」


俺のだ、とは言わない。

ただ、鷹野のものではない、と言う意味で、凱司は首を振るでもなく否定した。



「ふぅん……でもきっと、大事なもんなんだろ? …道案内してくれた時に拐えば良かった」


一樹と一緒に楽しそうに歩いてるの、見たし。と言う息吹の目は、ひどく歪んでいて。


不意に、乾いた笑い声を立てた。



「あいつ、突っ込んできたんだ。刃先は自分に向いてんのに」


あの子を売ったらいい、って言ったら。


「だから、そのまま刺そうと思った」