たぶん恋、きっと愛




息吹は、立派な布団に寝かされていた。

手厚い介護を受けたのか、凱司の殴った箇所も、白いガーゼで丁寧に覆われ、唇の血の跡もなかった。


凱司が部屋に入れば、薄く目を開け、引き攣れたように唇の端を上げた。



「よぉ、跡取り」


目に、力はない。


「宇田川、薬だけ先に飲ませてやれ」

「そうですね」


渡された抗生剤と痛み止めをフィルムからプチプチと取り出して、息吹の背に手を当て起き上がらせた。


「飲め」


包帯のない左手に薬を乗せてやり、口に運ぶのを見計らって水の入ったコップを持たせれば。

息吹は、黙ってそれを飲み下した。



「…なあ、一樹は?」

「大丈夫だ」



凱司は知っている。


息吹は、弟を嫌いな訳ではない。

金の為ではなく、ただ純粋に、唯一の家族として。