たぶん恋、きっと愛




「凱司さん、朝のお食事は?」


久しぶりに会うが、相変わらず柔らかい話し方をするひとだ、と凱司は思う。

年は、宇田川より少し下。

ごく普通の主婦に見えなくもないけれど。
宇田川の妻、という事以上に、度胸は据わっている。


「いえ、済ませてきました」

「ではお茶をお持ちしますね」


穏やかに笑顔を見せて、妻が姿を消すと、宇田川は小さく息をついた。


「……朝食、雅さんが作られたんですか?」

「ああ」

「昨日は色々ありましたからね、さぞお疲れでしょうに…健気なお嬢さんですね」


確かに昨日から、雅の泣いた顔ばかりを随分見た気がする。

笑顔もどことなくぎこちなく、元気はなかった。


「今日は…笑わせてやんなきゃな」

「そうですね、せっかく愛らしいお顔立ちなのですから」


出掛けに抱き上げた時にだけ、少し愉しげだったのを思い出して、凱司は。

あれはもう無い、と、しがみつく雅の感触を振り払った。