凱司は、鷹野の部屋のドアを、ノックもせずに開け放った。
無言でベッド脇にうずくまる雅と。
目を閉じている鷹野に目をやると、ずかずかと踏み込んだ。
「熱が高いのか」
「うん、でも昨日預かったお薬飲んだから、大丈夫だと思…」
「ならお前はこっちだ」
雅の小さな声を最後まで聞かずに、凱司は軽々と、雅の体を担ぎ上げた。
「ひぁっ…! やっ…ちょっ…」
「やじゃねぇ。手ぇ掛かりすぎだ」
肩に担がれた雅は逆さまに凱司の背を叩いたけれど、慣れない高さに体を硬直させた。
ドアを抜ける瞬間、鷹野の押し殺し切れない笑い声が聞こえたけれど、凱司はそのまま、雅の膝を抱え直して。
ドアを閉めた。

