たぶん恋、きっと愛




「いたたたたた……」


鷹野のシャツは、脇腹辺りがざっくりと裂けている。

染み込んだ血は、もう乾いているけれど、充分生々しい。



息吹の傷が、手の甲側から貫き通った明らかな刺し傷だったのに比べて、鷹野の傷は。

刺される間際に避けた、深い切り傷だと、病院で説明を受けた。

鷹野からは、刺されると思ったから避けて反撃した、とだけしか聞いていないけれど。



「起こしていい?」

「佑二、重そうだしな」


小さく喋る鷹野の声に、ふと、佑二の目が開いた。

長い前髪が左に流れ、寝惚けたような目があらわになる。


一瞬の間の後、抱いていた雅の頭から、弾かれたように手を離す。



「…っ、別に…何も!」


さすがに雅の頭を振り落とせなかった佑二が、珍しく狼狽えて。

立ったまま見下ろしている凱司と、特に弱った素振りでもない鷹野と、胸に眠る雅とを順に、見やった。



「何も言ってないだろ」


くすくすと笑った鷹野に、佑二は、ひどく安心したように息をついた。