佑二は、困っていた。
抱えた膝に、ついに顔を埋めてしまった雅が、泣きもしなければ喋りもしなくなってしまったのだ。
密着している佑二を避けるでも、自ら身を寄せるでもなく、ただ固く膝を抱き、顔を伏せている。
喋らない、動かない。
だが、佑二が心底困っているのは、そこじゃなかった。
問題は。
見切れてこそいるが、雅の正面の壁に張られた、鏡。
「……なあ……パンツ、見えてるけど?」
ばっ、と顔を上げて、膝を床に付けた雅が、慌ててスカートの裾を直す。
「ごめっ…なさい…っ」
「…やー、俺はいいんだけど」
佑二は。
そろそろ腰、痛いんだよね。
ずっとパンツ見ててもいいんだけどさ、と立ち上がって雅に手を差し出した。
「あっち、片付けよ?」
僅かに見える隠れた目を見上げ、雅はそっとその手を。
取った。

