「…凱司さん!ここではマズいです…!!」
一瞬で殺気だった凱司に、宇田川が囁くように叫ぶが、遅い。
左手で髪を掴んだまま、そのこめかみあたりに拳を叩き込んだ。
掴まれた髪と、繋がれた首とのせいで。
頬骨の上の皮膚が、裂けた。
「ぐっ…」
「お前だけは、甘やかすんじゃなかったな」
首輪が付いていることなど意に介さないのか、凱司は投げ捨てるように息吹を右に薙ぎ払うと、倒れ込む体を掬い上げるように脇腹に、ブーツをめり込ませた。
「今はダメです!」
宇田川は小さく叫ぶと、ぐいっと紐を引いて。
激しく噎せる中に血痰を吐いた息吹を、座らせた。
「そ…んなに、大事なんだ?」
ゲホっ、ゲホっと強く噎せた息吹の目から生理的な涙が流れるが、唇は。
可笑しそうに笑みを、刻んでいた。

