たぶん恋、きっと愛




指定された病院の、夜間救急外来の自動ドアをくぐれば。

既に宇田川が息吹と共に座っていた。



「よぉ…跡取り」


にっ、と唇の切れた顔で笑う、息吹の顔は、酷くやつれていた。


「鷹野は?」

「今、処置して頂いてます」

「こいつは終わったのか」

「ええ、少し右手の親指が取れかけただけですから」

12針縫いました、と、包帯で巻かれた息吹の手を、物のように持ち上げた。



「いっ…てぇだろ!ジジィ!」

宇田川の手を左手で払い除け、わざとらしくため息をついた息吹は、一瞬、自嘲するように頬を引きつらせた。


「連絡が遅れて申し訳ありませんでした。一樹さんの付近を張らせていた者から連絡を受けて、すぐに向かったのですが…2人を見失いまして」


深々と頭を下げた宇田川の手には、黒革の太い紐が巻き付けられていて。

いつから付けられているのか、紐の先は、息吹の首に巻かれたベルトに繋がっている。



「ああ、私の犬のリードです」


半ば引きつった凱司の視線に気が付き、宇田川は、うちのラブラドール、可愛いんですよ、と。

目を和ませた。