ドアが閉まると、もう何も聞こえなかった。

防弾すらしているんじゃないかという厚さと重さのドアは、雅を閉じ込めた。


雅には、息吹という人間が、どの程度の事をしそうな男なのか解らないだけに、不安ばかりが膨れ上がる。

茫然と、その場にへたり込み、俯いた。



「…なんだか解んないけど…あんたは早く新聞片付けた方が良くない?」


リビングから顔だけ出した佑二を振り返っても、髪に隠れた目が見えなくて。

雅はぺたりと座り込んだまま、涙をこぼした。



「……何がそんな怖いのさ」


呆れたように言いながら傍に来た佑二を見上げる事は、しなかった。

ただ、ぎゅっと目をつぶり、これ以上涙をこぼさないように体を固くした、だけ。



「あんた泣いてたら、俺が怒られると思うんだよね」


ゆっくりと息を整えている雅のすぐ傍に座り込んだ佑二は、長い前髪の隙間から、困惑した目を覗かせた。