「佑二、あと頼むな」
「え? どこか行くんすか」
顔を上げた佑二の前髪を、凱司は、邪魔だとばかりに、くしゃりと掬いあげた。
「鷹野迎えに行ってくる」
あらわになった佑二の目は、急に立ち上がった雅に、驚いたように向けられた。
「いやっ!あたしも行く!」
「……なん、で…」
迎えに行くだけ…だろ?
と。
佑二はつい、口に出す。
「…ぁ………」
泣き出しそうな顔は、怪訝そうな佑二と、携帯を手にする凱司とを見比べた。
「お前はそれ終わらせて、佑二とケーキでも食え。…ああ、見た。今行く」
後半を、電話の向こうに喋りながらリビングを出ていこうとする凱司を、雅は追った。
そのまま玄関まで来ると、凱司のシャツを掴む。
「…鷹野さんどうしたの?息吹さんと会ったの? 大丈夫なんですか?」
「……んな顔、してやるな。大丈夫だ」
いつものリングブーツに足を突っ込んだ凱司は。
雅のあまりの怯えように、泣くな、と。
困ったように、笑った。

