凱司は頭を振る。


マズい。

いくら“俺のもの”だとはいえ、自分が呑まれる訳にはいかない。



「…ガキの癖に」


苛立たし気にコーヒーを飲み干した凱司は、雅の飲みかけの紅茶をも喉に流し込み、カップを2つシンクに放り込んだ。



唇を重ねる度に、大事になる。

惑うつもりはなかったのに、無意識にキスを重ねてしまった。


酒の口移しでもなく、脅かしでもない。

単純に、ごく自然に。

鷹野の事も、息吹の事も、まるで頭には無かった。




「……くそっ」


急に膨れ上がった切なさと苛立ちに、凱司は自嘲ぎみに笑うと。

目を閉じて。


大きく息を、吐き出した。