鷹野は。
今朝出かけて行った凱司に、心の中で悪態をついていた。
…手ぇ出すな、なんて、あんな真顔で言われたら、ほんとに何にもできないじゃないか!
至極真っ当な釘だとは思う。
雅は女で、俺が男なんだから。
だけどあんなにも。
心底気掛かりだ、と顔に書いてある凱司を見るのは初めてで。
鷹野は可笑しいような、困ったような、苦笑しか出なかった。
でも…、と。
シャワーの湯気が浴室を白く埋める頃、鷹野は立ち尽くすように顔を上げ、目を閉じた。
なんで、…俺のじゃないんだろうな。
凱司の拾ってきた、女の子。
怒鳴られても、キスされても、大人しく拾われて来た、雅。
ただの女の子じゃない。
“凱司の”もの。
好きだけど。
凱司の玩具を借りているような、そんな気分だ。
本気で、手出しする訳にはいかない。
壊す訳には、いかないんだ。

