「……ねぇ、鷹野さん」
大人しく足に絆創膏を貼られながら、雅は小さく声をかけた。
鷹野は口に未開封の絆創膏をくわえたまま、指先の一枚を雅の足の甲に貼り付けて。
んー? と生返事をした。
「あたし、やっぱり恋は…駄目だと…思います」
鷹野さんも、凱司さんも、好きだけど…傍にいると緊張するし、不安になる。
「…でも、一緒にいたい…と思うのって…おかしい、ですよね」
鷹野はくわえた絆創膏を手に持ちかえ、紙を剥がしながら、黙って雅の踵を指で探る。
指先で、擦れた皮膚の質感を確かめて、貼り付けた。
「…あたし、がね、好きとか、言っちゃ駄目なの」
思っても、駄目だし、ましてや好かれるなんて。
「いくら考えても、苦しい。どうしたって…有り得ない」
だから。
もう……言わないで?
「…雅ちゃん、さ」
もしかしたらさ、恋じゃないかも知れないよ?
視線を合わせずに、そう言った鷹野に、今度は雅が口をつぐんだ。
「好きは好き。恋かどうかは、また先の話」
俺を、好きだと感じるんだろ?
じっ、と見つめる雅と、ようやく視線を合わせ、鷹野は目を和らげた。
「うん、好きだと…判断…しました」
「…判、断?」
「うん、判断。いろんなシミュレーションしたんだけど…」
鷹野の目に、愉しそうな色が戻る。
サンダルを雅の足元に置いてやりながら、唇の端を上げた。
なら、それでいいじゃないか。
別に、恋である必要はないし、恋じゃなきゃおかしい訳でもない。
ね?

