助手席に座り、素足を外に出したまま空を見上げた雅も。
その傍で車に寄りかかり、黙って煙草をくわえた鷹野も。
視線を、合わせられなかった。
鷹野は。乱れたペースを戻せずに、内心焦る。
確かに途中までは、きちんとコントロール出来ていた筈だった、のに。
凱司が居ないだけの、事が。
こんなに、どうにもし難い空気になるなんて。
事もあろうに、本気で緊張させてしまっているし、強引に空気を流す事すら出来兼ねる。
俺も、駄目な男だなあ…と思いながらも鷹野は。
きちんと緊張が出来ている雅に、少しだけ安心感を覚えた。
投げ出すような無気力でもなく過剰に怯えるような事もない。
至極真っ当な、反応。
鷹野は、ため息と共にゆっくりと。
煙を風に乗せながら、空を見上げた。

