「足、こっち貸して」
助手席に座らせ、ドアをあけたまま地面に膝をついた。
「え、…や、だ」
「だって、痛いだろ?」
下から見上げるように雅と目を合わせれば、今度は雅が慌てて目を逸らせた。
「ぬ…いでおくから、大丈夫です」
「…あーはいはい、ちょっとごめんねー」
雅の言うことをすっかり聞き流し、有無も言わせない素早さで膝裏から手を差し入れた。
両膝を揃えたまま、くるりと向きを変えられた雅が、びっくりしたように小さく息を飲み、弾かれたように笑いだした。
「… 今のすごいですね! 何の抵抗もできなかった!」
よじれたスカートを直しながら笑う雅も、サンダルを脱がされて初めて、ふと笑うのを止めた。
「…た、鷹野さん? あの…、だいぶ恥ずかしい、んです…けど…」
「はい我慢」
「えぇっ」
素足に、買ったばかりのペットボトルの水を流しかけ、砂を洗い流す。
鷹野の指先が、擦れた箇所をなぞると、一度ぴくりと震えたきり、雅は押し黙った。
「気持ちいい?」
「……ぃ、です」
冷たい水は、疲れた足に気持ち良いかと聞き、雅もそう答えたはずであるのに。
鷹野の指が、止まった。
「…か…乾いたら絆創膏貼るから…そのまま足、ぶらぶらさせててね」
いつになく気まずそうな笑みを見せた鷹野に。
雅は、小さく頷くと、何かを振り切るように、頭を振った。

