「そういえば、鷹野さん…も、刺青ありますか?」
この前、鎖骨の下に何か見えた、と、その辺りを見ながら雅は首を傾けた。
「うん、あるよ。凱司のほど豪勢に入ってないけどね」
片手でシャツを引き下げて、ちらりと見せた肌には、黒い線。
「…やっぱり蛇ですか?」
「うん、蛇と、たれパンダ」
「たれぱんだ!?」
嘘!と続けて叫んだ雅は、珍しく声を立てて笑った。
「あと内腿にリラクマ」
「えぇ!?」
愉しげに笑う雅の唇は、今朝、鷹野が選んだリップクリームの、ローズピンク。
凱司が、出掛けに不機嫌だったのは。
雅が自分でそれを付けていた訳ではないのを、見たからでもある。
鷹野の手で色を乗せられた唇で、可愛いですか? などと無邪気に聞かれては、凱司の性格上、さぞ苛ついたに違いない。
「そのうち見せてあげるよ」
にっこりと笑顔を見せれば、雅は鷹野の喉元を見つめ、不満そうに唇を僅かにとがらせた。
柔らかく癖の入った前髪をかき上げながら、雅は何かに気が付いたように視線を止めて。
そのまま指先を、鷹野の喉元に伸ばした。
「………」
「……雅ちゃん?」
首筋を撫でられる感覚に、不覚にもドキリとしてしまった。
「…あっ…ごめんなさい」
慌てて手を引っ込めた雅は、繋いでいた手をも離して、一歩後ずさった。
「ごめんなさい、綺麗、だったから」
「コレ?」
シャツを引き下げた時に襟首に引っ掛かったのか、細いプラチナの鎖を指でつまめば。
雅は申し訳なさそうに、頷いた。

