「次は何、見ようか?」
人の多い中、はぐれがちな雅を引き止めておく為に繋いだ手は。
小さくて、冷たかった。
いや、急激に冷たく、なった。
「………そんなハッキリ緊張されると俺、ドキドキする」
「だ…だってっ!」
指先まで冷たくさせた雅の目を真顔でまじまじと見つめ、ふっと目を逸らせた。
そんな目、反則だ、と。
鷹野は黒い髪をかきあげて、ため息と共に天井を見上げた。
凱司のいない三日間、どう遊んでやろうかと思っていたのに、とんだ計算違いだ。
手を繋いだだけで、こんなに意識されたら、こっちまで緊張する。
「あ、の、やっぱり…手は…」
冷たい手のまま、囁くように言う雅は。
そっと掌を引き、鷹野の親指だけを握り直した。
「このくらいが、いい、かな…とか…思ったりなんか…しちゃったりなんかして…?」
ああ、もう。
ほんと、どうしてくれようか。
「お土産! 凱司さんにお土産買いたい、です」
握られた親指に、つい神経を集中してしまっていた鷹野を見上げ、雅は早口で、言った。
確かに多少は警戒してくれたほうがいいんだろうけど、と、鷹野は苦笑いしながらも、手首をひねって再び、手を繋いだ。
「はぐれたら、心配だから」
雅は、ひどく戸惑った目で。
いつものように緩慢に思案していたけれど。
無理に手を引こうとは、しなかった。
「あの…彼氏とかに………」
「見えて構わないけど?」
雅の言い分は、もう読める。
鷹野は言葉を遮るように言い切ると、口の端を上げて、笑った。

