「雅、座れ」
あまり遅くならないうちに、と柳井たち三人を帰した凱司は、途端に不機嫌な色を見せた。
黙ったまま帰宅したそのままに、いつもの雅の椅子を指差した。
「…はぃ」
「お前、嘘も方便って知ってるか?」
鷹野は、10個ずつ包装されている煙草から、丁寧に包装紙をはがしている。
「なんで、一緒に住んでることを言わなかった? ヤツに期待持たせておきたかったのか?」
「…凱司さんが………嫌がると思った…だけ」
しょんぼりと、小さな声で答えた雅が、僅かに腹立たしげに唇を噛んだ。
「そんな嘘ついたら…柳井先輩は……本気にするじゃないですか」
そんなの、おかしい。
と、雅は顔を上げた。
「凱司さんも、鷹野さんも、そんなの嫌でしょう…? こんな高校生の恋愛になんか…巻き込めない………と思った」
夢見がちで、浮わついてて。
別にあたしじゃなくても、いいものに。
くっついたり、離れたり。
セックスしたとかしないとか。浮気したとかされたとか。
そんな話に、巻き込めない。
真っ直ぐに凱司を見つめた雅の目は。
初めて見るような、強いもの、だった。

