「“先輩”も。あんまり食い下がって、女の子困らせるもんじゃないよ」
だいたいさ、と鷹野は可笑しそうに続ける。
「同棲してる事は、眼中にないわけ?」
「…………は」
真っ直ぐに見据えた鷹野は、柳井の戸惑った目を見て、眉をひそめ、ゆっくりと雅に向き直った。
「…雅ちゃん…? まさかそんな大事な事も言わずに……?」
「…お前……俺はてっきり…」
知ってて来たと思ってたから、コイツ度胸あるなぁと思ったんだ、と。
笑っていいのか怒っていいのか判断のつき兼ねた顔で、凱司も唖然と雅を見つめた。
「え…ええええええ!? 同棲!? え、誰と? …っ…三人で!!?」
「ちょっ……声でかっ…」
静かに田鹿と視線を交わしていた加奈子が、弾かれたように立ち上がり、叫んだ。
店中の視線が集まり、田鹿は慌てて加奈子の口を抑え込む。
顔を真っ赤にしてもがく加奈子を押さえつけながら、田鹿は。
魂が抜けたような柳井に、痛ましげな視線を投げた。
「雅……さすがにそれは…俺、可哀想だ」
一番先に言って欲しかった、と柳井も笑うしかないのか、ひきつった渇いた笑みを、浮かべた。

