誰かを好きになんかなったら、つらいだけな気が、するの。
だから。
「したいと、思わない」
膝の上で、ぎゅ、とスカートを掴む雅が。
泣き笑いのような表情を浮かべて、再び俯いた。
「…先輩に抱かれるのは、嫌」
ぶふッと思わず噎せたのは柳井だったか、田鹿だったか。
「…雅ちゃん、あんまり馬鹿正直に言うもんじゃないよ?」
苦笑混じりに口を挟んだのは、鷹野だった。
「こういう時はね、“彼氏がいるから付き合えません”って言えば済むんだよ」
どこのどいつかと聞かれたらね
「迷わず俺にしておけばいい」
に、と笑った鷹野の目は本気だ、と。
鷹野を見ていなかった雅を除いた全員が、顔をひきつらせた。
「だって…」
「だってじゃないよ?こんな長引かせたって受け入れられないんだろ?」
しょんぼりと肩を落とした雅の頭に手を置いて、鷹野は苦笑した。
「ごめんなさい。嘘、ついたらいけないと思ったの」
田鹿の隣で、静かに見ていた加奈子が。
真面目すぎるのも大変よね、と呟いた。

