「……加奈子ぉ…俺、加奈子で良かった」
「加奈子“が”良いって言いなさいよ…って突っ込みたいとこだけど…あの人かっこいぃ!!」
「ええええええっ」
「怖い!でもかっこいぃ!一途な愛って感じ!?」
ほんのり頬すら染めた加奈子に田鹿はおろおろするけれど。
女の子の感性って不思議だなあ、と。
どこか冷静に、思っていた。
要は、自分は付き合う気は無いけれど、下手に触れたら殺すぞと。
金髪の彼は、言っているのだ。
…なんだそれ。
保護者か?
親なのか? 兄貴なのか?
「ちょっと田鹿も言ってよ! 加奈子は俺のだって!」
声を殺してまではしゃぎ倒す加奈子に、ほっとした。
先を歩く雅は可愛いが、こういう無邪気な明るさが足りない。
いつも一歩引いた場所で静かに微笑んでいるような……
カッコ良く言えばミステリアス…悪く言えば根暗。
「ちょっと! なんで無視!?」
「え、あ、ああ! 俺は加奈子のだ!」
「セリフ違っ!」
目的の店に着いたのか、立ち止まって、こちらを見ている鷹野と雅を眺めて。
背後の、黙りこくる柳井に。
田鹿は心底、同情した。

