水の中でキラキラと。
鱗を反射させて泳ぐ魚は、綺麗だった。
水槽のガラスに手を触れれば、目眩のするような、倒錯感が心地良い。
「ねぇ雅」
ふと呼ばれて我に返ると、同じクラスの女の子が、冷やかすように、寄ってきた。
「雅、彼氏とどこまで行ったの?」
「…え?」
どこまで?
なにが?
「みんな、好きな人と付き合い始めたし? 雅も柳井先輩と付き合ってるんでしょ?」
「え?…付き合う?」
なに…やめて。
「え、まだ? もう絶対に付き合ってると思ってた!」
やめて
「じゃあきっと、今日、告白されるんじゃない? いいなあ、柳井先輩カッコいいもんね!」
やめて
やめて
「そんな…事………」
楽しそうにはしゃぐクラスメイトとは裏腹に。
雅の気持ちは、急激に、醒めて行った。
「あ! 一緒にいたら、先輩が告白できないよね!ごめんね、邪魔して!頑張ってね!」
やめて。
要らない。
恋愛なんか、興味ない。
変わらずに楽しそうな友人を、雅は初めて。
忌々しく、思った。

