たぶん恋、きっと愛



「……口、開けろ。飲め」


昌也は酷く戸惑った顔で、心配そうに向こうから見つめている。

鷹野は。

零れて首筋に流れた酒に、慌てて手を出したけれど、すぐに立ち上がってタオルを取りに、離れた。



「雅」


普段、怒鳴る事も多い凱司の、低い声。


鷹野がタオルを持って昌也の傍をすり抜けた時には。


自分で瓶の中身を、口に含んだ凱司は。

雅の頭を両手で掴み、そのまま。


躊躇うことなく唇を、合わせていた。



びくり、と震えた雅がくぐもった声を上げる。

凱司は強引に舌先と指先で雅の唇を割り、溢れないように、吐き出さないように。

深く、確実に、流し込む。



鷹野が傍に膝をついた時。

ようやく雅の喉が動いた。
奇妙な産声のような、悲鳴。



「………ぁあぁ…ぁ…ッ…」


喉を押さえて飛び起きた雅の目は、涙で濡れてはいたけれど。

恐怖に歪んでは、いなかった。



「…っ…熱っ…やだ熱いっ…」

「……やだじゃねぇ。手間かけさせやがって」


背もたれに大きく倒れ込んで、盛大に息をついた凱司も。

呑み込まなかったウォッカがきつかったのか、軽く、咳き込んだ。