たぶん恋、きっと愛




「……雅ちゃん、ちょっとごめんね」


怖い、怖いと、雅の全身が叫んでいる気がして。
鷹野は部屋に踏み込んだ。


「やっ……」

小さく悲鳴が漏れたのを、無視して。
呼吸の浅い雅の肩を、抱いた。



「……大丈夫」

大丈夫だから、と髪を撫でる。

ゆっくり、リビングに誘導しようと背を押せば、雅は素直に、足を踏み出した。


「雅ちゃん、ゆっくり深呼吸」

呼吸の浅さが、尋常じゃない。

凱司に連れられて来た日は、こうではなかった。

同じような雷雨だった筈なのに、こんな状態ではなかった。



花火大会…か、と。

ゆっくり歩かせながら、鷹野はしっかりと雅を抱き止めていた。


「も……大丈夫」

震える小声で言う雅は、しっかりと掛け布団を抱えている。


「……ごめんなさい、ちゃんと、歩ける。凱司さんに、怒られる、から……」



一層、掛け布団をきつく抱きしめ、雅は何かを吹っ切るように大きく息を吸い込んで顔を、上げた。