たぶん恋、きっと愛





雅は、しっかりと顔を上げていた。

部屋に飛び込むように現れた鷹野に、気付いたのか気付かなかったのか。

ただ真っ直ぐに窓の外を見ていた。


両手には、薄手の掛け布団を抱えて。
打ち付ける雨で見えなくなった暗い空を、見上げている。



「……雅ちゃん、おいで」


そっと、開いたままのドアから声を掛けた鷹野を、ゆっくり振り返った顔は、真っ青に血の気が引いてしまっている。


「おいで」


ぎゅ、と噛み締められた唇を、無理に笑みの形に作ろうとして失敗したのか、雅はその場で俯いた。


「……赤い髪の混じった…知らない人たち…が………」


部屋が明るくなるほどの稲光が、雅の体を震わせた。

喉を塞がれたような、圧し殺した悲鳴。


「…っ大丈夫!大丈夫だから!すぐ、行きます…!」

再び顔を上げて、今度は巧く笑顔を作った雅だけれど。

立て続けに光る空と低い振動に、動けないで、いた。