たぶん恋、きっと愛



昌也は。
15歳の子が作ったにしては、手慣れた感じの食卓と。
綺麗にカットされたパイと。

到底まともに食事をしているとは思えなかった凱司と鷹野とが、揃ってテーブルに着いていることが、ひどくアンバランスに見えて落ち着かなかった。


「ほんとに凄いね、いつも作ってるの?」

思わず雅に話し掛けてから、はっと気が付き口をつぐんだ。


昼間、泣かせてしまってから、気まずい気がして。
会話を、していなかった。


「はい、お婆ちゃんちに居るときは一緒に作ったし、従姉の所に来てからは、毎日作ってたから」


雅は、昌也の気まずい思いなど、まるで知らないかのように、笑顔で答えた。


“お婆ちゃんち”にいる時?
従姉妹の所に来てから、は?


…両親は?

と。
3人がチラっと視線を交わしたけれど。

雅は特に何も気になっていないのか、紅茶の香りを嗅いだ。


「…この匂い、好き」

嬉しそうな雅は、鷹野を見る。
鷹野も、唇の端を上げて、にこやかに。
それは良かった、とおどける。


鷹野と目が合うと、雅は照れるのか、頬を染めて僅かに視線を逸らせていた。



「…お前ら気色悪ぃんだよ。さっさと食え」

バッサリと断ち切るように、雅の頭を掴んで前を向かせた凱司と。
舌打ちした鷹野とは。


昌也の当初の心配を消すことは無く、むしろますます増やして行く一方、だった。