ほどなく帰宅した鷹野は。
玄関まで小走りに出迎えた雅に、小さな紙袋を渡した。
「グレープフルーツの紅茶だってさ。雅ちゃん好きそうだから、少し貰ってきた」
いい匂いしたよ、と。
いつもと変わらない笑顔で頭を撫でた鷹野を、雅は申し訳なさげに見上げた。
「昼間……ごめんなさい」
「ん~?」
「……お仕事途中だったんでしょう?」
ちゃんと起こさなきゃいけなかったのに…、みんなに迷惑かけちゃった。
ごめんなさい、と眉を下げる雅は、恥ずかしそうに俯いた。
「ああ、大丈夫。休憩時間内に戻ってるし、昌也も凱司もそろそろ終わるでしょ?」
もう一度頭を撫でて、鷹野は。
ああそうだ、と、にこりと笑った。
「凱司ばっかりズルいから、今夜は俺の部屋、泊まりおいで」
「え? あ…はい」
あまりにあっさり頷いた雅が、少し首を傾げて沈黙した。
「約束ね」
鷹野は楽しそうに声を出して笑うと。
沈黙して固まっている雅を置いて、リビングに向かった。

